リアピックアップはなぜ斜め

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毎度ご愛読いただきありがとうございます。
リペアスタッフの平です。

今回は雑学的な記事になります。


ストラトキャスター、皆さん大好きですよね。

私も初めてのエレキギターはストラトタイプでした。
全壊しましたが。

今ではハムバッカーを搭載したギターをよく使うようになりましたが、
それでもやっぱりたまに弾きたくなる、それがストラトです。


そもそも、「ストラト」と一口に言っても、
本物のストラトキャスターは本家Fenderだけであって、
その他のブランドのものは「ストラトに似たギター」でしかありません。
(もちろんそれが悪いわけではありませんが。)

しかしそれを知らないプレイヤーも多くいらっしゃいますので、
それでは創生者レオフェンダーも報われません。

なのでこれからはレオフェンダーさんに敬意を払って、
Fender以外のストラトのことは「ストラトタイプ」と呼びましょう。


さて、それはさておきそろそろ本題に入ります。


タイトルの通り、今回は「ストラトのリアピックアップ」についてです。

みなさんお気づきの通り、ストラトのリアピックアップは斜めに傾いています。

リアだけ不自然に斜めに取り付けられているのだから
これには何か理由があるはず…!

そう、あるはずなんです。
ですが正直、これについて100%の答えはありません。

「斜めに取り付けられている」
という事実だけをもとに様々な憶測がされていますが、
どれも憶測にすぎず、本当の理由は創生者本人しか知りません。

今回はそんな「~説」の数々を紹介していきます。


1、音量説

まずは音量の差を考慮した説です。

弦を弾いた音は、人間の耳には1つに聞こえますが、
音を作り出している弦の振動は、端から端まで均等ではありません。

例えば振動の幅に関しては、
弦の中央付近では大きく振動し、端ほど小さく振動します。

振幅は音量に関係しており、ピックアップはその上部の弦振動を拾いますので、
ピックアップがブリッジに近いほど上部の弦の振幅は小さくなり、
振幅が小さいほど音量も小さくなります。

そのため、リアピックアップの音は他に比べ小さくなっており、
低音域の音量が小さいと音が薄っぺらく聴こえてしまうため、
6弦側を中心方向へ傾け、音のバランスをとった、という説です。


これは確かに理にかなっているように思えます。

ですが、ピックアップの音量は弦との距離も影響しますので、
音量を大きくしたいだけなら、6弦側を弦に近づけれは済む話です。

なので信憑性はぼちぼちですね。


2、音色説

次は音色に着目した説です。

こちらも同じく弦の位置による振動の仕方の違いによるものですが、
端に近いほど、硬質で高音の目立った音になり、
中心に近づくと丸く柔らかい音になります。

これはリアピックアップとフロントピックアップを聴き比べた時に、
その傾向を感じることができますね。
(もちろんピックアップの違いによる音色の違いもありますが。)

そのため、1弦側の音をよりトレブリーに、
もしくは6弦側の音をよりウォームにするために斜めになった、という説です。

これはかなり信憑性が高いですね。

ですが、もしそういった目的があったのなら、
リア以外のピックアップも斜めになっていてもよかったんじゃないでしょうか。

リアだけそういう音にしたい理由がいまいち不明で、
実際ムスタングはフロントも斜めになっていますし、
逆にジャガーはどれも斜めになっていません。

また、エレキギターが開発された当時の音楽シーンでは、
ギターのバンド内での役割は、メロディーラインを奏でるリードではなく、
装飾音的な立ち位置だったため、リアピックアップの使用頻度は低く、
そんな使われないピックアップのために工夫を施すとは考えにくいです。

なので、この説も絶対とは言えないですね。


3、音量説パート2

先ほど紹介したものとはまた違う観点の説です。

位置による音量の差を考慮したところまでは同じなのですが、
今度は、他のピックアップと比べてリア全体の音量が小さいという点です。

そのため、ピックアップの内部のコイルの巻き数を増やすことによって
音量を大きくし、それにより肥大化したことで斜めになった、という説です。

これは微妙ですね。

肥大化するほど巻き数を増やしたら音量どころか音色も変わりますし、
肥大化したからといって斜めにする必要もないですし、
前述の通り音量だけなら弦に近づけるだけで済みますし、
そのためだけにピックアップのボビンの形状を変えるのは
生産のコスパが悪いです。

なのでこの説は私の中では一番ないですね。


4、デザイン説

次は今までの説と打って変わってデザイン説です。

音のことなんかは全く無視して、
リアだけ斜めってオシャレじゃね?ということです。

この説が私の中では最有力候補です。

創生者レオフェンダーさんは、もともと電気屋さんらしく、
ギターはほとんど弾かなかったそうです。

そのため、ギターに必要な音色の知識なんかは
知らなかったんじゃないかと思います。

ただ、いくらレオフェンダーがギターに関して無知だったとはいえ、
ギター製作を持ち掛けた協力者や、共同制作者がいたはずなので、
設計や実際の製作にそういった人物の意見を取り入れなかったとは
考えにくいという部分もあります。

また、レオフェンダーはエレクトリックスチールギターも製造していたため、
少なからずエレキ楽器の知識は持っていたのかもしれません。

なのでこの説も絶対的ではありません。


5、生産の都合説

これは私独自の説なのですが、生産の都合を考慮したという説です。

実は、Fender初のギターはストラトではなくテレキャスターです。
(実際にはブロードキャスターという名称でした。)

テレキャスターはご存じの通り、ブリッジプレートに
リアピックアップが取り付けられています。

ブリッジプレートの端には壁があり、独特な形状をしています。
この形状やサイズでは、ピックアップは斜めにしか取り付けることができません。

つまり、テレキャスターのブリッジプレートの形状が優先され、
リアピックアップが斜めに取り付けられた、という説です。

ブリッジプレートの形状の由来は分かりませんが、
この形状にせざるを得ない何らかの事情があったんじゃないかと思います。

おや?結局謎が増えただけですね。


という感じでどの説も絶対的な信憑性はなさそうですね。
結局答えのない話になってしまいました。

しかし、どのような理由があったかはさておき、
50年も前に開発されたFenderギターが今もなお当時の姿で作り続けられているということはすごいことです。

レオフェンダーはやはり天才だったのでしょう。


まぁとにかく、

「信じるか信じないかは、あなた次第です。」



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