ギター・ベースの配線材 総集編

その他

1.配線材の種類
2.配線材の規格
3.配線材の選び方

4.定番配線材の音の印象

    1.配線材の種類

 配線材はエレキギター・ベースに使用される信号伝達に使われる部品の一つですが、音の経路で有る関係上、つかわれている配線材によって音質に影響します。
 配線材には大きく分けて2つの種類があります。
被覆の中に線材が一本のみ通っている単線と呼ばれるものと、細い配線材が何本も束ねられている撚り線の2種類があります。
 これらは単芯、多芯とはまた異なりますので、ご注意ください。
 この仕様の違いは個々の線形の太さに直結してきますので、音質にも大きな違いを生み出します。

左が単線、右は撚り線ですがハンダメッキされることで単線のようになっています。

 また、撚り線も上記の写真のようにはんだメッキされることで、
単線のようにまとめられている配線材や、下の写真のように無酸素銅素材の無メッキ線もあります。

上がはんだメッキの撚り線、下が無メッキの撚り線

 音質の話となりますと、主観の部分が大きくなりますので、あくまでも筆者の意見となりますが、単純に線径の太いもののほうが低音域をしっかりと通しやすい傾向にあるように感じます。
  もちろん、線材の種類や線材の外周の磨きこみ等によって音質に違いはありますが 同じ太さの規格の線材同士の場合、一本の太い線径のものが通っている単線と、細い線径のものがまとめられている撚り線材では単線材を使用するほうが音は太く感じられます。

 また取り回しやすさや、ケーブル自体の折れやすさにもかかわってきますので耐久性の観点でも大事な部分です。
 同じ太さのものでは、通常撚り線のほうが単線よりも柔軟で、ある程度しっかりと角度をつけることが要求される場でも使いやすく、経年劣化での金属疲労による折れの心配もすくない傾向にあります。

 ギターやベースの内部回路には基本的には撚り線(22~24AWG)が使用されることがほとんどです。

定番の22AWGクロスワイアで配線いたしました。

 単線が使用される場合はGIBSON等を中心にアース線部に太い単線を一本使用するケースがあります。

      単芯と多芯

 その他の種類といたしましては、ハムバッカー等に使用される多芯ケーブル(一本の大きい被覆の中に細い撚り線の配線材が複数本まとめられている)や
シールドケーブルという被覆の内側や外側に、外来ノイズを遮断するための、
網上のシールド線や、アルミを巻き込んであるタイプのものがあります。

上が単芯シールド線(廉価モデルのハムバッカー用)
下が4芯シールド線(マイクケーブル)


 

2.配線材の規格

 ギターの内部回路の改造に興味のある方ならば、一度はこの「AWG」という文字をご覧になったことがあるのではないでしょうか。
 配線材の直径や断面積、電気抵抗率などを定めた規格のことを指す用語で American Wire Gauge の頭文字をとって「AWG」と呼ばれています。

 正直なところ、真空管アンプやパワーアンプの内部回路のような高電圧、高電流環境で使用するのであれば配線材選びにも注意が必要ですが、エレキギター・ベースの内部に流れる電圧・電流量等微々たるもので、基本的にどんな配線材を選ぼうとも問題が生じてしまうことのほうが稀です。

 しかしながら、基本的にエレキギターやエレキベースはハイインピーダンス信号という外来ノイズや線材自体の抵抗等の影響を非常に受けやすい信号となっているため、配線材自体の太さや素材、被覆、磨きこみ具合などにより、音質に影響がでてしまうことは前述させていただきましたとおりです。

 エレキギター・ベースにおいてはAWG規格を見る際には、配線材自体の全体の太さと、撚り線の場合まとめられている個別の線径に注意してみるとよいとおもいます。
 内部配線材として使われる定番の線径は22~28AWGが定番で、高級機種の多くが22AWGのものを採用しており、廉価帯のものでは26~28AWG相当の配線材を多く使用している傾向にあると感じます。

右からコスパモデルの配線材、上位ラインの配線材
左は当店がカスタムで使用するベース用配線材。
こうしてみると太さに大きな差があります。

 配線材を交換して音が変わったという記事をネットでは多く見かけますが、
多くは廉価帯のギターの細い28AWGの配線材を22AWGの配線材に交換しているものが多く、配線材全体を一回り太くすると音質にももちろん影響がでます。
 やはり定番となっているだけあり、22AWG相当の太さのCloth Wire等の定番の撚り線材は音質的にもバランスがとれている印象があります。

     3.配線材の選び方

 では最後に、具体的にどのように配線材を選べばよいかについて考察してみたいと思います。
  基本的に音さえ出ればよいという状態であれば、どのような配線材を選んでいただいても問題ないといえるかもしれません。

 やはり音に関しては主観的な部分が多くなってしまいますので、
音に関しての部分は一度考えず、配線材を選ぶ要素としては
1、キャビティの状況(スペースの余裕)と 取り回しの良さ
2、外来ノイズ対策
3、使用する部分に求められる耐久性
の3点があるかと思います。

 1、に関しましては、太い音を目指し16AWGのような配線材を全体にしようしてしまうと、キャビティに収まりきらなかったり、ジャックへ向かう穴へ線材が通らない場合などがあります。

 2、に関しましては、ノイズ量にも直結し、導電塗料が塗ってある個体かどうかでも大きくかわってきますが、例えばレスポールタイプのギターのように、
PU→ボディ下部のポット→ボディ上部のトグルスイッチ→ボディエンドのジャックへといった具合に配線が長距離になり、また導電塗料で処理できない区間を長く引き回すタイプの場合、シールド線を使用しノイズを抑える方式が採用されていることが多くあります。

   4.定番配線材の音の印象

 また、シールドも網線部分のみを入手することが可能なので、自分だけの単芯シールド線を作成することもできます。
 銀を使用した配線材+別でシールド等のご用意も可能なので、ご相談くださいませ。

3、使用する部分に求められる耐久性に関しましては、ポットのナットが緩んで来た際にポット自体が回転してしまうことで配線材を引っ張ってしまうことがあります。
 その際にあまりにも細い配線材の場合、配線材が引きちぎれてしまうことがあるので、ある程度の太さで耐久性のあるものを選んでおくのが無難です。
 また、別口の方法としてはポットの背面につけるアース線に太く曲がりにくい単線を使用することによって、ポット自体の空転を防ぐような効果があるものもあります。

 最後に主観的な音の部分を含めて、著者の個人的な配線材選びの好みに関しましては、やはりシングルコイル系にはCloth Wireの22AWGのものが好みです。
シングルコイルらしい高域の立ちや、ややザラツキを感じさせるエッジ感もありシングルコイルのおいしいところを引き出してくれる印象があります。

 ホロウボディや、レスポール系のギターには内部が22AWG程度の単芯シールド線が良いとおもいます。
 これに関しては配線材の取り回しの距離が長く、いかにハムバッカーといえど何かしらのノイズ対策をしたくなってしまう部分からのチョイスになります。
 自作した単芯シールド線で内部の線材にこだわってあげることで音質にも拘る事もできるのでおもしろい部分だと思います。

 ベースには無酸素銅などを使用した18AWGや16AWGといった、非常に太い線材かつ無メッキのものを使うのが個人的には良いと思います。
生々しい低音のパンチ感がでるため、アッシュボディのジャズベースなど、
元々の音が硬いベースほど効果があると思いますので、是非一度お試しください。