キルスイッチとその構造
有名アーティストのギターや改造で耳にするキルスイッチについて軽くまとめてみたいと思います。
1.キルスイッチの役割
キルスイッチとは、ギターやベースの改造で定番化したものの一つで、
スイッチを押すことによって一時的に音を出なくするためのスイッチです。
キルスイッチを使用した演奏としてはバケットヘッドやトム・モレロが有名です、晩年のエディ・ヴァンヘイレンもギターに取り付けておりました。
このように書いてしまうと単純なスイッチなのですが、使用するスイッチや方式にバリエーションがありますのでご紹介していきます。
2.キルスイッチの系譜
別のスイッチを増設せずに疑似キルスイッチとしての機能を持たせる場合は、
レスポール等の2つVOLポットが使用されているタイプのモデルの片方のVOLポットの音量を0にし(例としてフロントVOLを0にした場合)、ピックアップセレクターをリアからフロント側へ切り替えることによって音量を出ないようにする方法があります。
この状態にした上で、音を伸ばしながらセレクターを高速で切り替えることによって独自の音響効果を得ることができます。
しかし、上記の方法によってキルスイッチ機能を持たせたい場合、
どうしても2つ以上のVOLがついている必要があります。
また、どちらかのピックアップの音量を0にしておかないといけないため、
そちらのピックアップの音が必要な際や、咄嗟の音量操作が難しくなってしまいます。
そこで別途、音を出ないようにするためだけのスイッチを増設する方が多くなってきました。
3.キルスイッチの方式
そんな形で発展を遂げてきたキルスイッチですが、
その方式にはいくつかのバリエーションがあります。
また、そのバリエーションの違いはスイッチの構造に起因する為、
スイッチ自体の切り替わり方に少し触れてみたいと思います。
スイッチにはオルタネイト方式と、モーメンタリ方式のスイッチがあります。
オルタネイト方式はスイッチを押すことによってON,OFFの状態が切り替わっていきます。
それに対し、モーメンタリ方式のスイッチは、スイッチを押している間だけ、ON、OFFが切り替わる方式のスイッチとなっています。
キルスイッチにはどちらの方式も採用されるのですが、近年ではモーメンタリ方式のキルスイッチがつけられているものを多く見かけるようになりました。
使用するスイッチの方式によって実際の切り替え易さは変わってくるのですが、モーメンタリ方式のほうが連打がしやすいものが多く、連続した切り替えに対して耐久性があるスイッチが多い為、モーメンタリ式のスイッチが使用されることが多くなってきたのではないでしょうか。
対してオルタネイト式は、スイッチから手を離しても音がでない状態を持続させることができる為、ご希望の使用感によってモーメンタリ式、オルタネイト式のどちらが適しているかでスイッチを選ぶ形となります。
4.スイッチのバリエーション
では最後に使用するスイッチのバリエーションについて、
いくつかご紹介いたします。
1,トグルスイッチ(モーメンタリもオルタネイトもあります。)
定番の切り替えスイッチです、キルスイッチに使用する際は摘みが大きいものを使用するケースが多くあります。
スイッチ自体が小さい為、木部やピックガードへの加工が最小で抑えられます。
2,押しボタンスイッチ(モーメンタリもオルタネイトもあります。)
ゲームセンターのゲーム機等で使用するタイプのスイッチで、
基本的にはモーメンタリスイッチが採用されます。
晩年のエディヴァンヘイレンのギターにも搭載されました。
スイッチ自体が大きい為、木工加工が大きく必要になります。
3,スイッチポットを使用するタイプ(モーメンタリとオルタネイトあり。)
ギターのポットのうちの一つをスイッチポットにすることにより、
その部分にキルスイッチを取り付ける方式です。
プッシュプルポットではスムーズな切り替えができず、プッシュプッシュポットでは耐久面に不安があり、オルタネイト方式しかありませんでしたが、
近年ではモーメンタリ方式のキルスイッチ専用のポットも発売されています。